第一話:水槽預かってくんない?

ノースダコタの怪しいアパートに住んでいた頃の話。

そのアパートは古い一軒家を改造してアパートにした建物で、
一階部分はK-40が住んでた1ベッドルームのアパートといつも空家のスタジオアパート。
地下は1ベッドルームアパートになっていて、2階は2ベッドルームのアパートになっていた。

このアパート、大家がとてもひどい奴で、住人は長続きせず、みんなすぐに出て行った。
かくいうK-40も、契約の1年が過ぎると同時にすぐ脱出したくちである。
後日談によると、とうとう我慢できなくなった住人のひとりが訴訟にもちこんだらしい。

閑話休題

当時の2階の住人はパーティ好きの若いオネーチャンで、よく2階に呼ばれてはみんなで飲んでいた。
地下に住んでた若い学生の男の子はおとなしいタイプで、滅多に見かけることもなかった。
隣のスタジオに住んでたはずの男はいつも彼女の家に行ってて不在。

みんな大家が嫌いで、みんな残り1ヶ月ぐらいで出て行くことが決まってた2003年の5月頃。
ある日、上のオネーチャンがやって来た。

明日引越しなんだけど、ちょっと手伝ってくんない?

特に用事も無かった俺は、気軽に引き受けた。
で、次の日。2階から表に止った引越しトラックへ荷物を運ぶ手伝いを。
ほぼ全部運び終わって、後は細かいものをまとめる程度になった頃、

あぁ〜、しまった!

いきなり頭を抱え込んでパニック状態になったオネーチャン。
理由を聞くと、水槽を運ぶ手段がないらしい。トラックには載せられず、手で運べる距離でもない。
そのままアタフタしていたオネーチャン、何を思ったか突然俺に向かって聞いた。

水槽預かってくんない?

「とりあえず、部屋を空っぽにするために今日だけ預かってくれない?明日取りにくるから。」
どうせ部屋にはありあまるほどスペースがあったし、特に断る理由もないし、
どうせ2〜3日のことだろうと、気軽に引き受けてしまった俺。

小さな10ガロン水槽には金魚が数匹。殺風景だった部屋に華が咲いた。
次の日。オネーチャンからの連絡は無く、金魚達はまたうちのリビングで夜を明けた。
一週間が過ぎた頃、さすがに俺もおかしいと思い始めたんで、エサを買いに行った。
それから1ヶ月が過ぎた後もオネーチャンからは何の連絡もなく、
俺自身が引越しする日が来てしまった。
水槽を捨てるわけにもいかないから、金魚も一緒にお引越し。

こうして、元の買主に見捨てられた哀れな金魚達はK-40家の家族となった。

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