グリップと回転

前々回と前回でそれぞれ角度と推進力の話をしたので、今回は回転とグリップに焦点をおいて話を進めていくことにしましょう。グリップの仕方は様々なバリエーションがあり、「一番いいグリップ」などというものは存在しません。基本的には自分が一番握り易いグリップで投げればいいのですが、握り方のポイントは存在します。ここではもっとも代表的な「パワー・グリップ」と「コントロール・グリップ」のふたつを紹介しながら、そのポイントを見ていくことにしましょう。まずはディスクを握る角度からです。

〜ディスクを握る角度〜


まずは上の写真に注目してください。赤い線は腕の中心線で、青い線はディスクがのっている平面の延長線です。左側の写真ではかなりの角度で赤と青の線が交差していますね。この状態で投げると、どんなに腕の振りを調節しても、ディスクはノーズ・アップの角度で射出されてしまいます。腕の振りで得られる推進力も正しく伝わりませんよね。真ん中の写真では、赤と青の線が平行に重なり合っていますね。このように腕の中心線とディスクの平面が平行になっていると、腕の振りの角度がそのままディスクに伝わり、ハイザー・アングルやノーズ・アングルの調節もやり易くなります。正しいディスクの位置で握ってやると、右側の写真のようになります。慣れるまでは毎回投げるたびに確認する癖をつけましょう。

〜パワー・グリップ〜
ティー・ショットや長いホールでの2投目など、距離を稼ぎたい時によく使われるのがこのグリップです。写真のように、親指以外の4本の指を揃えてディスクのリムを掴みます。ちょっと最初は握りづらいかもしれません。そんな時は、上の写真の青い線にディスクを乗せて、順番に指を折っていくといいかもしれません。注意しなくてはならないのは「親指の位置」です。1枚目の写真のように、親指は必ず他の4本の指よりも前に出すように心がけてください。人差し指の先を親指の付け根よりも下に持ってくるようにするのがコツです。2枚目の写真で見るとよく判りますが、親指はリムの内側に沿って配置し、しっかりとディスクを押さえるようにしましょう。親指がディスクの中心を向いてしまうとうまく投げられません。パワー・グリップを下側から見ると3枚目の写真のようになります。


〜それぞれの指の役割〜
親指: 親指はディスクの頭を押さえて、ノーズ・アップになるのを防いでくれます。また、親指でしっかりと握ることによって、リリースの時のディスクの姿勢が安定し、飛行中にディスクがぶれなくなります。投げたディスクが「ぶよぶよ」と揺れている人は、親指をしっかりと上から押さえるようにしてみましょう。
人差し指: 人差し指はリリース時の最後の要です。ディスクに加えられた推進力が、人差し指で押さえられている力を上回った時にディスクは手から飛び出して行きます。人差し指でしっかりディスクを握っていないと、「すっぽ抜け」て左の方に飛んでいってしまうことになります。逆に、人差し指をガチガチにしていると、「引っ掛って」右の方に飛んでいってしまいます。ディスクを投げる時は、人差し指を緩めて手からディスクを離してやってはいけません。こうすると、ディスクに回転がかからず、推進力も伝わらず、飛距離が格段に落ちてしまいます。ディスクは、手から「引きちぎられる」ように飛び出さなければなりません。うまく投げられるようになると、ディスクを投げた瞬間に「ビッ」とか「ぶちっ」とかいう音が聞こえます。これがディスクが指から引きちぎられる音なのです。
中指・薬指・小指: 残りの指はディスクをしっかりと手のひらに押し付けておく役目をします。これによってディスクの軌道が安定します。そして、リリース時には外側の指からマイクロ秒単位の時間で順番にディスクを離れていき、ディスクに回転を付ける役目を担っています。これらの指をしっかりと押さえることによって、よりよい回転がかかることになるのです。

〜練習方法〜
しっかりとディスクを握り、「引きちぎる」感覚を身に着けましょう。初心者のうちは、手首の動作や肘を曲げることで回転を掛けようとしますが、「引きちぎる」ことができないと、ドライブに必要な回転は掛けられません。まずは肘をあまり曲げずに腕を振ってみて、ディスクが自然に手から飛び出していくように練習しましょう。こうして「引きちぎる」感覚が身に付いたら、リリースの瞬間にスナップを利かせてさらに回転を与えるようにします。ここで間違ってはならないのは、スナップでかかる回転は、手首が外に行く時ではなく、内側に帰ってくる時に掛かるのであるということです。スナップの感覚を付けるためにはディスクを手首だけで真上に投げてみましょう。手首を上に曲げることで投げたディスクにはあまり回転がかかりません。今度は上げた手首を素早く下に戻す瞬間にディスクが手から出て行くようにしましょう。とてもよい回転がかかりますね。これが「スナップで掛けた回転」なのです。これだけで結構飛距離が伸びるはずです。次のステップでは、肘の曲げ具合を増やして、さらなる回転と推進力を得る練習をしましょう。

〜コントロール・グリップ〜
アプローチ・ショットやパターを投げる時など、力よりもコントロールの正確さが重要な場合によく使われるグリップです。写真のように、人差し指をディスクのリムに掛けてやります。この人差し指の位置は人によっていろいろで、リムの上に掛ける人、真横に添える人、ディスクの下に入れる人、まさに十人十色です。また、この写真ではパターを使っているので、中指、薬指、小指がディスクの腹を押さえていますが、ミッドレンジのディスクでこのグリップを使う時は、ちゃんとこの3本の指をリムに当てて固定するようにした方がいいでしょう。このグリップだと、しっかりとした回転がかかりにくいのが難点ですが、ディスクの進行方向が決め易くなるので、正確なショットが可能になります。



〜まとめ〜
さぁ、これでパワー・グリップとコントロール・グリップの両方ができるようになりましたね。後はひたすら練習あるのみです。毎回投げる前に、ちゃんと握り方と手首の角度を確認して投げる癖を付けておくと、自然に体がグリップを覚えてくれるようになります。また、ディスクの軌跡がおかしい時は、ランダムに投げるのではなく、原因を追究して、悪い癖をなくすようにしましょう。他のグリップにも興味のある方は、こちらのページに写真が盛りだくさんで紹介してあるので、試してみてください(ただし、英語ですが)。

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