日本語を英訳すると何故会話が変になってしまうのか
〜薬を飲む〜
日本語では、「薬を飲む」という表現が当たり前ですよね。もし仮に日本語を英語に直訳すると、「I drink pills (アイ ドゥリンク ピォズ)」または「I drink medicine (アイ ドゥリンク メディスン)」となりますね。でも、英語圏では薬は「飲む」ものではなく、「取る(使う)」ものなのです。ですから、普通は「I take some pills (アイ テイク サム ピォズ = 錠剤を(体に)取り入れている)」または「I'm on medication (アイム オン メディケイション = 薬を使って治療中)」という表現を使うことになります。
〜豆を飲む〜
日本語の視点から見れば大して差が無いように感じられますが、「I drink pills」と英語で言った時の感覚がどれぐらいすごいのか考えてみましょう。日本人の貴方にはいまいちピンときませんよね。・・・っていうか、解るはずがないんです。だって、日本語に訳した時に違和感がまったくないんですから。では、誰かが貴方にこう言った時の自分の反応を想像してみてください。
今、豆を飲んでるんだ( ̄□ ̄;)!!
一瞬、びっくりして聞き返してしまいますよね。我々日本人にとって、豆は「食べる」ものであって、「飲む」ものではないわけです。しかし、「I drink pills」という表現は「豆を飲む」と同じぐらいのインパクトがあるわけです。この辺りの感覚の違いが、英語で会話をする時に重要になってくるわけですね。日本語で文章を組み立ててそれを英訳していたのでは、単語レベルでは問題なくても、全体的に見た時に「気持ちの悪い」文章になってしまうわけです。
〜コンピュータを開ける〜
ついでにもうひとつ別の国の例を挙げてみましょう。誰かが「I opened my computer (アイ オゥプンド マイ カンピュートゥァ)」と言ったとしましょう。貴方はどういう状況を想像しますか?90%以上の人は、「PCの蓋を開けて中身をのぞいて見た」と思うことでしょう。アメリカ人の99%以上もそう解釈することでしょう。しかし、これを聞いたトルコ人の100%は「PCのスイッチを入れた」と理解します。トルコ人にとって、PCや電灯のスイッチは「開けたり閉めたりするもの」であって、日本人のように「入れたり切ったりするもの」ではないわけです。では、「自分はトルコ人じゃないからそんな間違いはしないよ」とふんぞり返ってる貴方、「PCのスイッチを入れた」と文章を英訳してください。「I switched on my computer (アイ スウィッチト オン マイ カンピュートゥァ)」または「I switched my computer on (アイ スウィッチト マイ カンピュートゥァ オン)」と答えた方が半分以上でしょう。前者は「使ってるPCを別のやつに切り替えてみた」、後者は「(「メインのPCがトラぶったから、ずっと使ってなかった古いPCを」または「しばらく倉庫に眠っていて不使用だったPCを」)立ち上げてみた」という感じのニュアンスになります。日本語で「スイッチ」は「入れる」か「切る」ものですが、英語では「取り替える」または「入れ替える」という意味になるからなのです。「正しい」英語表現では、「I turned my computer on (アイ ターンド マイ カンピュートゥァ オン)」となります。日本語に直訳すると「PCの状態を(オフから)オンにひっくり返した」となります。ボリュームも同じで、日本語では「上げる」か「下げる」かですから、「raise」または「drop」を使いたくなるところですが、英語では「turn it up (トゥァン イット アップ)」または「turn it down (トゥァン イット ダウン)」という表現になります。
〜私は過激派〜
ではここで、文化の違いによる表現方法の差異を考察してみましょう。例として、誰かが貴方に「貴方はテロリストではありませんよね?」と質問したとしましょう。日本語の会話であれば、99%以上の人の答は「はい」ですよね(過激派の貴方は、「いいえ、実は私はテロリストなんです」と答えるでしょうが・・・)。では、この会話を英語に直してみるとどうなるのでしょうか。まず質問の方ですが、「You are not a terrorist, are you? (ユー アー ナッタ ティラリスト アー ユー?)」となります。ここで「Yes (イャス)」と答えた貴方、アメリカの空港でこれをやると、間違いなくCIAに逮捕されて尋問を受けることになります(笑)。ちゃんと、「No, I'm not a terrorist (ノゥー、アイム ナッタ ティラリスト)」と言えるようになるまでは、海外旅行はしない方がいいでしょう。
アジア人に共通のこの間違いは、文化の違いによるものなのです。儒教が基となっている東洋の文化では、「相手の意向を尊重し、自己主張を抑える」ことが美徳とされています。ところが、ヨーロッパ系の文化では「自分の意思を明確に表明する」ことが意思疎通の基本となります。この違いをはっきりとさせるために、普段の会話では省略されていて文章として表に出てこない部分を補って、上の会話の応答の部分を再考察してみることにしましょう。日本人の貴方の「はい」という答は、「はい、貴方のおっしゃるとおり、私はテロリストではありません」という長い文章の省略形ですよね。すなわち、相手側の「こいつはテロリストではないよな」という想像を肯定して、「貴方は正しいですよ〜」と伝えてやるのが東洋の文化であるわけです。しかし、英語圏で会話する場合には、相手側の考えや意向は無視してまったく問題ありません。例え相手が自分のことをテロリストだと思っていようがいまいが関係ありません。「私はテロリストではありません」という、自分の主張をはっきりと相手に伝えてあげることにしましょう。仮に相手が「貴方はテロリストですか」と聞いてきても、答はまったく変わらないわけです。「私はテロリストではありません」と率直に伝えてあげましょう。最初はとまどいますが、慣れてくるとこれほど便利な言語はありません。なぜなら、相手がなんと聞いてきたか100%聞き取れなくても、焦る必要はまったくないんです。「自分はこうだ〜」と、言いたい事を好きなように言ってしまいましょう。それで会話がいささかの問題も無く続いてしまうんです。ほんと、英語って便利な言語ですよねぇ。
〜英語で文章を組み立てる〜
上の例に挙げたように、日本語で文章を組み立てて英訳したのでは、英語として「気持ちの悪い文章」または「別の意味の文章」になってしまうことが多々あります。英会話において発音の次に重要になってくるのは「英語での文章の組み立て」です。どんなに発音がよくても、意味不明な文章を作っていたのでは意思疎通に不具合が出てしまうわけですね。では、どうやって「正しい表現」を学べばいいのでしょうか?有効な方法はふたつしかありません。
聴く 又は 読む
映画でも音楽でも生の英会話でもラジオの英語講座でもなんでもいいですから、ひたすら聴いて、出てきた表現を真似しましょう。そして、使ってみましょう。本を読んでいる時に出くわした表現を使ってみましょう。英字新聞を読んで見つけた熟語を使ってみましょう。何度も使っているうちに、自然と身についていきます。最後に、日本人がよく間違える表現をいくつか挙げて今回の話を締めくくることにしましょう。
日本語表現 | 直訳 | 意訳 |
薬を飲む | I drink pills (アイ ドゥリンク ピォズ) |
I take some pills (アイ テイク サム ピォズ) |
電話を借りていいですか? | May I borrow your phone? (メイ アイ ボァロゥ ヨァ フォン?) |
Can I use your phone? (キャナイ ユーズ ヨァ フォン?) |
すぐ行きます! | I'm going! (アイム ゴーイン) |
I'm coming! (アイム カミン) |
彼に会った(2回目以降) | I met him (アイ メット ヒム) |
I saw him (アイ ソウ ヒム) |
使い方を教えてください | Could you teach me how to use it? (クッジュー ティーチ ミー ハゥ トゥ ユーズィッ?) |
Could you show me how to use it? (クッジュー ショウ ミー ハゥ トゥ ユーズィッ?) |
電話番号を教えてください | Could you tell me your phone number? (クッジュー テォミー ヨォァ フォーン ナンバァ?) |
Could you give me your phone number? (クッジュー ギミー ヨォァ フォーン ナンバァ?) |