純粋物質は灰色

K−40が大学院生の時に所属していた研究室はわりと新しい研究室で、
まだ2年目に突入したばかりという若い教授の指導(?)の下に研究(?)していた。

K−40が正式加入する直前の研究室の内訳は、
教授1名、大学生6名、高校生1名、そして、大学院生1名。ちなみに、みなアメリカ人。
外国人が半数以上を占めるアメリカの大学院ではかなり珍しいわけで。

問題はこの大学院生。「俺は大学院生だから何でも知っている」と普段から豪語。
自らを「King」と呼び、何も知らない大学生の尊敬を集めて(?)いた。
・・・が、悲しいことに彼は「知ったか大王」だったわけで。

さらに、後で知ったことだが、彼は「白人至上主義者」でもあったという。。。

そんな極端な環境の中に何も知らずに飛び込んで行ったK-40。
研究室のお試し期間中にそれは起こった。

元々有機屋なせいで特に苦も無く与えられた実験をちょいちょいちょいっとこなしていたK-40。
とりあえず、モノ(試薬)が出来上がり、精製も済んで純白の粉が出来上がった。
俺を「監督」してたキングに見せてみることに。

K−40: できたよん
キング: ん?これは純粋じゃないけど使えないことはないな。
K−40: へ?どいうこと???
キング: この試薬は純粋だと灰色なんだ。

ええっ?!( ̄□ ̄;)!!

赤や青といった色ならともかく、灰色の純粋物質というのは存在できない。
普通の色は、白から特定の色を抜くことによって作れるが、
灰色というのは白に黒を足すしか作る方法がないのである。

すなわち!

灰色の試薬には「白い物質」と「黒い物質」が混ざっている。
ふたつの物質が混ざってるわけだから、純粋などとは逆立ちしても言えないわけで。
どう考えても俺の作った試薬の方が純度は高いはず

しかし、プライドだけ高くて脳みそというものがまったく存在しないキング。
新入りのアジア人の方が純度の高い試薬を作ったとは死んでも認めない。

阿呆とはこういう奴のことをいう

当時はまだ純粋でナイーブだったK-40、特に反駁することもなく、
「変ったことをいう奴だな」と、知らないフリをして流しておくことにした。

それから数ヵ月後、別の大学生を「監督」しているキングの声が聞こえてきた

純粋な試薬は灰色だからな。白くなったら捨ててしまえ。

あぁ・・・・バカは死んでも直らないのね。。。。

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