光厳禁

光を吸収したり発したりする試薬を作っていた大学院生時代の話。

光とは実はエネルギーの塊なわけで、紫外線の方が可視光線よりエネルギーが高く、
虹色の青→緑→黄→赤という風にエネルギーが下がっていき、赤外線まで下がると見えなくなる。
大雑把にエネルギー量を比べると、紫外線は赤外線の約2〜3倍ものエネルギーを持っているわけで。

そんな光のエネルギーを利用するための試薬だから、我々の作った試薬はよく光を吸収する。
中には吸収したエネルギーのせいで化学反応を起こしてしまい、ぶっ壊れてしまうものもいる。

キングの作っていた(もとい、作ろうとしていた)試薬もそんな「壊れやすい試薬」のひとつだった。
彼は「キングの試薬・光厳禁」と書いたキャビネットに自分の試薬を格納しており、
実験する時は窓のブラインドを下ろし、実験室内の蛍光灯を消していた。

たまに、誰かが間違って電気をつけたりブラインドを開けたりすると、

光厳禁だって言ってるだろっ!

・・・と、相手かまわず罵声を浴びせるキング。

そんな彼にも悩みはあった。闇の中だと肝心の試薬が見えないのである。
見えないと精製や抽出が難しい。そんな問題を解決するためにキングは大胆な手段を講じた。

紫外線ランプを使う( ̄□ ̄;)!!!

キングの作っていた試薬は紫外線を当ててやると青色に発光した。
そんな物質の特性を使ってやれば、紫外線を当てることによって闇の中でも試薬が見える。

・・・が、しかし!

「なんでも知っている」キングはある重要なことを知らなかった。

紫外線も光なのだ!!!

紫外線も赤外線もただ単に人間の目に見えないだけで、光には違いない。
光系の研究室に所属ながらそんな単純なことも知らなかったキング。

紫外線ランプ常灯!

可視光線の2倍近いエネルギーをぶち込まれたキングの試薬。
しかも瞬間的な照射ではなく、何十分もの連続照射。

試薬は見事にぶっ壊れるまくる!

何も知らない大学生達はキングに意見などするわけなく、
この時点ですでにキングによる数々の妨害行為にムカついていたK-40は陰で嘲笑い、
まさか自分の大学院生がこんな愚行を犯しているとは夢にも思わぬ教授も気づかぬまま。

「自分が常に正しい」キングはひたすら試薬に紫外線を当て続ける・・・・

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