正しい使い方?

大抵の有機化学の研究室に置いてある、エバポ。
有機溶媒で抽出した試薬を分離する時に大活躍。

真空ポンプで減圧して、低温で溶媒を蒸発するさせるだけの物だが、
フラスコをくるくる回して表面積アップし、蒸発効率を上げてやるので、
ものの5〜10分で純粋な試薬が分離できるという、化学屋の必需品。

汗が体を冷やすのと同じ原理で、液体が蒸発すると周りから熱を奪うわけで。
奪われた熱を補うために、フラスコを恒温水槽のぬるま湯につけて軽く温めてやる。
急いでる時は、お湯の温度を上げてやると蒸発の速度が速くなる。
が、熱すぎて沸点を超えると、爆発してエバポ内部に試薬が飛び散ってしまうんで、
沸点の低い溶媒を蒸発させる時は、お湯のかわりに室温の水を使うのが普通。


ある日、実験室に入って行くと、エバポを使おうとしているキングが。

「なんでも知っている」キングの理論によると、

いかなる時も恒温水槽はオン

だそうで、沸点が人間の体温と同じエーテルを飛ばすはずなのに、

恒温水槽から立ち昇る湯気!

案の定、減圧してお湯につけた瞬間、ブバッ!

エバポ内に飛び散る試薬・・・

K−40:あ〜、恒温水槽のスイッチ切った方がいいんでないの?
キング:何言ってんだ、お前。スイッチ切ったら温度が下がってしまうだろ!

だめだこりゃ・・・


数日後、実験室に入って行くと、

空中でくるくると回るエバポ発見!

K−40:あ〜、キング、フラスコ下ろすの忘れてるよ〜

キング:いや、これが正しい使い方なのだ

K−40: ええっ( ̄□ ̄;)?!

キング:こうすればエーテルの爆発を防げるのだ!

キングの理論によると、フラスコがお湯に接触すると爆発するから、

触れないように空中で回す!

でも、恒温水槽はオン

当然のことながら、溶媒の蒸発にしたがってフラスコ内部の温度は氷点下に下がる。
恒温水槽から立ち昇る湯気がフラスコで冷やされて霜になる。
さらに立ち昇る湯気が冷やされて霜になる、霜になる、霜になる・・・

30分後・・・

フラスコの表面に超分厚い氷がっ!!!

温度が下がってるから蒸発効率も非常に悪く、
普通の人なら大体5分ぐらいで終わるエーテルの蒸発が、

キングがやると2時間強!

そして今日もエバポは空中で周り続ける・・・

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