ブドウの種類

前回の話で、ワインはまずブドウの種類で選ぶものだということが解りましたよね。それでは、今回はよく市場で見かける「Big 6」と呼ばれる7種類のブドウを中心に掘り下げてことにします。はい、「Big 6」なのに「7種類」です。赤ワイン用の「Pino Noir」、「Merlot」と「Cabernet Sauvignon」のコンビ、「Shiraz(Syrah)」、そして白ワイン用の「Riesling」、「Sauvignon Blanc」、「Chardnnay」、の合計7種類をあわせて「Big 6」といいます。「Big 6」以外によくみかけるブドウの種類では、アメリカではかなりポピュラーな赤ワイン用の「Zinfandel」、赤ワイン入門者を虜にするBeaujolaisの「Gamay」、スペイン赤ワインの代名詞でもある「Tempranillo」、イタリアのChiantiを語る上で絶対に外せない「Sangiovese」等々。白ワインが好みの人向けには、甘いワインの代名詞でもありワイン初心者キラーでもある「Gewurztraminer」、同じく甘さが売り物でマスカット・ジュースでも有名な「Muscat」、甘過ぎず且つバターっぽくない「Pinot Grigio(Pinot Gris)」等々・・・

W(`0`)W うがぁ〜!!

と叫んでしまった貴方、ご心配なく。何種類もあるブドウのすべてを知り尽くす必要はありません。

〜「Big 6」と呼ばれるブドウ達〜
前置きはこの辺にして、「Big 6」と呼ばれるワインの特徴をそれぞれみていくことにしましょう。赤も白もそれぞれライト・ボディからフル・ボディへという流れで紹介します。「ボディってなに?」と思った方、ご心配なく。ボディについては後の「ワインの味わい方」のコーナーで説明することにします。今のところは、舌触りの重さや日本語の「コク」に近いような単語だと、漠然と捉えていただければ結構です。

Pino Noir:Big 6の赤の中で一番ライト・ボディなワイン。全体的にフルーツ系な味わいで、ラズベリーやチェリー系の味が強く、少しストロベリー系がかかったものもあります。シルキーな舌触りが特徴で、赤ワインが苦手な人でもさらっと飲めてしまうのがいいですね。気温の低い時期は常温で、夏場などの暑い時期には軽く冷やして(〜15℃ぐらい)飲むと、味と香りのバランスがとれてちょうどいいです。このブドウの最大の欠点は、栽培に手間がかかるため、お値段の方が張り気味になりがちなことです。フランスのバーガンディ(Burgundy)地方の赤ワインは基本的にこのPinot Noirというブドウが使われています。カリフォルニアではRussian River Valley周辺のPinot Noirが代表的ですね。オレゴンも質の高いPinot Noirの産地として有名です。

MerlotとCabernet Sauvignon:比較的ミッド・ボディであるこの2種類のワインは、味と香りが非常によく似ています。そのため、このふたつをブレンドしてあるワイン等も多々あります。カシス系の味が強く、プラムやブラック・チェリーのような味も特徴的です。両方ともちょっと草っぽい香りと舌触りがします。Merlotの方がフルーツ系が強く、Cabernet Sauvignonは杉の木の香りがするのが特徴です。Merlotは酸味のある後味がしますが、Cabernet Sauvignonはタニンの量が多いために飲んだ後に口の中がガサガサする感じがするもの特徴ですね。フランスのボードー(Bordeaux)地方の赤ワインはこのCabernet Sauvignonを中心にMerlotやCabernet Francが使われています。あまり知られていませんが、チリのCabernet Sauvignonは、良質でありながらもお手ごろな価格で入手が可能です。

Shiraz(又はSyrah):フルボディなこのワインは、アメリカなどのNew Worldでは「Shiraz」、フランスでは「Syrah」と呼ばれています。いかにも赤ワインといった濃厚な舌触りに、スパイスの利いたブラック・ベリー系の味が特徴です。ちょっと土臭い香りがするので苦手な人も多いですが、好きな人はとことん好きになってしまう赤ワインです。フランスのRhone地方北部の赤ワインはこのSyrahです。南部Rhoneでは基本的にGrenacheとブレンドしてあります。フランスのSyrahは、何年か寝かせてやるとまろやかになって非常によろしいです。オーストラリア産(特に南東部)のシャキッとしたフルーツ系のShirazは、新しいうちに飲んだ方がいいでしょう。

Riesling:Big 6の白の中で一番ライト・ボディなワイン。ほのかに黄色がかった、さらっとした舌触りな透明の液体は、リンゴやピーチ系の甘めの味が特徴。その甘さ故に気付きにくいのですが、何気に酸味が強いので舌の感覚を活性化させる働きがあります。ドライなものからものすごく甘いものまでレベルはいろいろあり、ワインに慣れていない人でも簡単にジュース感覚で飲めてしまうこのブドウ。アルコール分が少ないのもワイン初心者には嬉しいですね。ドイツのRieslingは特に甘いものが多い傾向にあります。フランスのAlsace地方で作られているワインはこのRieslingを使って作られています。

Sauvignon Blanc:白のミッド・ボディなワイン。フルーツ系の味が非常に強く、いい具合に酸味の利いたワインで、グレープ・フルーツのようなシトラス系からグァバやマンゴーのような南国系の味までいろいろあります。Rieslingのように甘くないので、甘いワインが苦手な人にはお奨めの白ワインです。Sauvignon Blancは寝かせても特に効果は得られないので、新しいうちに飲むのがよろしいでしょう。アメリカのRobert Mondaviのように「Fume Blanc」という名で売られているSauvignon Blancは伝統的なFumeスタイルの製法で醸造してあるため、オーク(樫の木)の臭いと味が染み込んでいます。フランスのLoire地方の白ワインはSauvignon Blancが中心です。チリやニュージーランド産Sauvignon Blancも安価ながら質の高いワインであることが多いです。

Chardnnay:おそらく白ワインの中で一番有名なChardnnayはフル・ボディな白ワインの代名詞。オーク(樫の木)の樽で醸造されていることの多いChardnnayは、樽からにじみ出るバニラ系の香りに、フルーツ系の酸っぱさとバターっぽい舌触りが特徴的です。フランスのバーガンディ(Burgundy)地方の白ワインはこのChardnnayを使って醸造されています。ものによっては、樫の木の臭いと味が強すぎるブランドもあるので、ちょっと注意が必要です。オーストラリアや南アフリカ産のChardnnayはオーク無しの場合が多いです。

〜「Big 6」以外のブドウ達〜
さてさて、代表的なワインの味を知る上で欠かせないのが上に挙げた「Big 6」ですが、これらのブドウ以外にもよく見かけるブドウがたくさんあります。ワインを語る上で外すことのできない、赤白両方のブドウ達をいくつか紹介することにしましょう。

Zinfandel:カリフォルニアのワインを語る上では絶対外すことのできない赤ワイン。ラズベリーっぽい味のミッド・ボディのものから、アルコール分が多くてスパイシーなブラック・ベリー系の味のするフル・ボディなものまで、味のスペクトラムはさまざまです。その糖分の高さからくるアルコール度数の高さには定評があり、赤ワイン好きにはたまらないブドウ。アメリカを筆頭にNew Worldの国々で栽培されていますが、やはりカリフォルニアのSonomaやNapaで作られているものが抜群にレベルが高いですね。

Gamay:フランスのバーガンディ(Burgundy)地方、特にBeaujolais産のGamayが有名です。ライト・ボディで、アルコール分も少なく、タニンも少ないワイン。さらっとした舌触りのストロベリー系で甘味のある、赤ワイン入門者にとっては非常に飲みやすいワイン。Pino Noirと同じく涼しい気候を好むので、フランス以外ではスイスぐらいでしか作られていません。寝かせてもおいしくならないので、1〜2年以内に消費するのがよいでしょう。また、赤ワインとしては珍しく、12℃から15℃ぐらいに冷やして飲む方ことをお奨めします。

Tempranillo:スペインのワインといえばTempranilloと言われるほどスペインのの代表的なワイン。タニンや酸味は多いですが、アルコール分は低く、チェリー系の飲みやすいワインに仕上がっています。ライト・ボディなものからミッド・ボディなワインまで幅は広く、さらっとしたしたフルーツ系の舌触りの飲みやすいものから、濃くドライでオークの利いたCabernet Sauvignonっぽいものまで、製造者によってそれぞれ癖があるのも楽しみのひとつです。温暖な気候を好むTempranilloですが、なぜかまだオーストラリアやカリフォルニアではあまり作られていません。不思議ですよね。

Sangiovese:イタリアの赤ワインを代表するといっても過言ではないぐらい有名なブドウ。Chianti地方で作られているワインは、Sangioveseを中心に、いくつかのブドウがブレンドされていることがほとんどです。さらっとした舌触りの、チェリーやラズベリーにストロベリーといった、甘酸っぱいフルーツ系の味が特徴です。しかし、酸味があるために甘ったるくなく、赤ワイン愛好者にも白ワイン派の人にも受けがいいワインです。トマト・ソース系のイタリア料理を食べる時にはとても相性がよく、料理の味を引き立たせてくれる、非常に重宝するワインでもあります。

Muscat:イタリアでは「Moscato」と呼ばれているこのブドウ。Asti地方を代表するスパークリング・ワイン、Spumanteの原料であるMuscatで作られた発泡系のワインは、アルコール分がかなり低く、ライト・ボディで甘く、炭酸入りの白ブドウ・ジュースのような感覚で飲めてしまいます。食事中というよりは、食後のデザートの感覚で口直しに飲むと非常によろしいワインです。もちろん、ワインに慣れてない人を引き込むのにも一番使えるワインでもあります。

Gewurztraminer:甘いワインの代名詞的存在でもあるGewurztraminerはフル・ボディの白ワイン。Rieslingの甘さとChardnnayのこってり感のいいとこ取りしたようなワイン。ライチ系の軽い甘酸っぱさはワイン入門者にとっては耐え難いほどに飲みやすいワイン。その甘さゆえに、飲む時にはしっかり冷やしておくことが大事です。Rieslingと同じく涼しい気候を好み、フランスのAlsace地方やドイツが主な産地となっています。

Pinot Grigio:Pinot Grisとも呼ばれるこの白ワインは、Rieslingみたいに甘くなく、かといってChardnnayのようにバター臭くもない、ドライな舌触り。赤ワインの原料であるPinot Noirの変種であるこのブドウは、ピーチやアプリコットといった、フルーツ系の味が特徴。甘ったるい白ワインは苦手だけれども、赤ワインのような酸味やタニンが苦手な人には、非常にお奨めできるワインです。Sauvignon Blancと同じく、寝かせてもあまり意味がないので、新しいうちによく冷やして飲むのがいいでしょう。

〜まとめ〜
なんだかんだ言っていろんな種類のブドウ達を紹介してしまいましたが、このすべてを網羅する必要はまったくありません。ただ、ワインを飲む時は、どのブドウから作られたワインなのかということを認識した上で飲むようにしましょう。そうやってワインの味とブドウの種類を関連付けていくことによって、「このブドウで作られたワインはこんな味と舌触りがある」という感覚が育って生きます。すると、別のブドウで作られたワインを飲んだ時に違いが解ってくるようになるのです。他にも紹介したいブドウはたくさんあるのですが、あまりいっぺんに数多く紹介しても頭がワヤになってしまいますから、今回はこの辺で止めておくことにしましょう。いよいよ次回は「ワインの選び方」の話をします。

inserted by FC2 system