ワインの楽しみ方
〜「Drink」と「Taste」の違い〜
英語で「Drink」というと、普通の「液体を飲む」という表現の他に、「アルコールを飲む」という意味が付いて回ります。酔っ払いや軽度のアル中の人を「Drunk」と呼んだりしますしね。で、何が言いたいかというと、ビールやウィスキーなどには「飲む(drink)」という表現を使うのですが、ワイン愛好家はワインを飲むとは言わないんです。我々はワインを「味わう(taste)」んですよね、実は。酔うために酒を飲むのではなくて、複雑な味や香を味わって楽しむのがワインという趣味の醍醐味なんです。では、どうやったら個々のワインのいい部分を十分に引き出してやれるのでしょうか?今回はワインの楽しみ方について掘り下げていきましょう。
〜各ワインの適正温度〜
ワインを味わう時に重要になってくるのが、ワインの温度です。温度が高いほど、ワインの中に含まれている香りの成分が蒸発しやすいので、香りを楽しむのには温度が高い方がよさそうですね。ところが、温かいグレープ・ジュースを飲んでもいまいちおいしくありませんよね。これは、酸味やタニンが温度が高くなることによって隠れてしまうからです。ですから、ワインを楽しむ時にはこの香りと味のバランスをうまく取ってやると、そのワインの一番いい部分を引き出してやることができるわけです。下の表を参考にしてだいたいの温度を合わせて楽しんでみてください。慣れてくると、こんな表を見なくてもだいたいの適正温度が解るようになります。「このブドウだからこの温度」というよりは、「こういう味のワインはこれぐらいの温度がいいかな?」といった感じで楽しむのがいいでしょう。
ワインの種類 | 適正温度 | 代表例 |
ライト・ボディで甘い白ワイン | 5℃から10℃ | Sparkling Wine、Riesling、Muscat |
ライト・ボディでドライな白ワイン | 8℃から12℃ | Dry Riesling、Dry Pinot Grigio |
フルボディで甘い白ワイン | 8℃から12℃ | Gewurztraminer |
スパークリング・ワイン(赤) | 10℃から12℃ | Lambrusco |
ミッド・ボディのドライな白ワイン | 10℃から12℃ | Sauvignon Blanc、 |
ライト・ボディの赤ワイン | 10℃から12℃ | Pinot Noir、Gamay |
フル・ボディの白ワイン | 12℃から16℃ | Chardnnay |
ミッド・ボディの赤ワイン | 14℃から17℃ | Tempranillo、Merlot、Cabernet Sauvignon |
フル・ボディでタニンの利いた赤ワイン | 15℃から18℃ | Cabernet Sauvignon、Zinfandel、Shiraz |
〜グラスの中に注いでみましょう〜
前置きはこの辺で置くことにして、早速グラスにワインを注いで見ましょう。この時、たくさん入れ過ぎてはいけません。赤ワインだと、だいたいグラスの5分の1から4分の1ぐらいが適当な量でしょう。白ワインなら少し多めで4分の1から3分の1ぐらいが適量です。スパークリング・ワインでもない限り、グラスの半分以上注ぐことは避けましょう。ワインが楽しめなくなってしまいます。
まずは白地のものをバックにグラスを傾けてみましょう。グラスの上の方から下の方に掛けてワインの色のグラデーションができますよね。白ワインだと、薄黄色から黄緑っぽい黄色まで。赤ワインだと透き通った赤紫から濃い赤紫まで。この色の濃さと透明度の違いで、ワインのボディの具合がある程度想像が付きます。ライト・ボディなRieslingだとあまり色が濃くなく、フル・ボディなChardnnayになると軽く緑がかった濃い黄色が基調になります。ライトなPinot Noirだと、なんとか向こう側が透けて見えますが、フルなShirazあたりになってくると、グラスの下の方では向こう側がまったく見えません。
さて、ワインの色具合を楽しんだ後は、ワインをグラスの中で回して見ましょう。慣れないうちは、グラスをテーブルの上に置いた状態でくるくる回してやるとうまくいきます。グラスを回すことによって、空気とワインが混ざり、酸化が進んでまろやかな味わいになります。また、回すことによって、ワインの中の香の成分が蒸発して、グラスの中に溜まってくれます。グラスの中のワインの量が多すぎると、回しにくいだけでなく、香の成分を溜めるスペースも小さくなってしまいますね。くれぐれもワインの注ぎ過ぎには注意するようにしましょう。ある程度回したら、今度はグラスに鼻を突っ込んで、グラスの中に充満したワインの芳香を楽しみましょう。いまいち匂いが判り難い時は、もう一度くるくると回して、香の成分を出してやってください。こうして、香を楽しんだ後は、いよいよ口に含んでワインの味を楽しむことになります。
軽く一口ほど口の中にワインを入れ、口の中全体に液体を転がしてみましょう。味覚は舌の特定部分に分布していますから、ワインのすべてを楽しむには口全体に液体を行きわたらせることが、ワインを楽しむコツとも言えます。さらに、液体の表面積が増えることによって、香の成分が蒸発し易くなります。蒸発した香の成分は、口内から鼻腔へと移動して嗅覚を刺激しますから、さらに香を楽しみ易くなるわけです。舌触りとワインの味を楽しんだ後、おもむろに飲み込んで、今度は後味を楽しみましょう。通の人や、本職の方々は飲み込まずに壷の中に吐き出しますが、僕は純粋にワインを楽しむだけなので、全部飲んでしまいます。ワイナリーに行ってワイン・テイスティングをする時は、少なめに注いでもらうように頼めば、酔って味が解らなくなるようなことも避けられますね。