第三話:新人がやってきた

フロリダに引っ越して約1年になろうとする頃、一通のメールが届いた。
差出人は5月にフロリダ大学を卒業してノースダコタに戻ったカーラちゃん。
件名は、「猫の里親募集中」
かなり危険な匂いのする件名に戸惑いながらも、やはり開けてしまったのが運の尽き。
そこには4枚の子猫の写真が並んでいた。

あぁ・・・かぁいい・・・・

もう居ても立ってもいられなくなり、すぐさま連絡先にメールを送る。
その週末に見に行くことになり、猫用バスケット片手に先方の家へ。
そこには、手のひらサイズの子猫達が4匹も転がりまわっていた。


あぁ・・・かぁいい・・・・

はやる気持ちを抑えながら、性別のチェックに入る。
家に帰ればメス猫が2匹いる。家の中で交配されては大変なことになる。
その場に居合わせたメス2匹のうち、一匹はすでに行き先が決まっていたために断念。
こうやって選ばれた残りの一匹。白地に黒と茶のブチがあるメス。
ちょっと困った顔をしているのが気になるが、特に健康に問題は無さそうな気配。
そのままもらって帰ることにした。

こうして我が家にやってきた新人の子猫。問題は、どうやって先住民に慣れさせるか

昔、猫を飼っていた我が家。ある日、子犬が家族の一員となった。
いきなり現れた新しい生き物に驚いた猫は子犬に攻撃を加えた。
そばに寄ると威嚇する。それでも近づくと猫パンチ。さらには猫キック。
間違って犬が猫の餌箱をつついた時なんぞは、猫に殴る蹴るの暴行を食らっていた子犬。
クリプトンとゼノンはそれほど凶暴ではないとしても、新人の子猫に対してどんな行動に出るか想像がつかない。

二人掛かりで手のひらサイズの子猫に襲い掛かられては、新しい家族の命に関る。
ご対面は慎重に慎重を重ねて行わなければならない。1週間ぐらいは別々の部屋に隔離しなくてはならないかもしれない。
そんな不安を胸に抱きながら帰途についた俺。ドキドキしながらアパートのドアを開け、バスケットと共に中に入る。
いつも通りに迎えに出てきたクリプトンとゼノン。バスケットの中を見て身を強張らせる。

なんだ、こいつ?!

バスケットの中でゴソゴソしている子猫の姿を認めたクリプトンとゼノン、あからさまに緊張した面持ちで中を見守っている。
とりあえず、バスケットの柵越しに対面した3名。先住民があまり攻撃的でないことをいいことに、新人を外に出してやる。
警戒心も無くコロコロと出てきた子猫に対して、先住民の2名が攻撃を仕掛けるかと思いきや、

2匹ともダッシュかまして逃げた( ̄□ ̄;)!!

自分の半分はおろか、4分の一もない子猫が出てきた瞬間に、「うしゃ〜」と悲鳴を上げて逃げていった先住民の2名。
あっけに取られている飼い主の前に出てきた子猫。新しい環境に戸惑っている様子。
とりあえず、話しかけながら撫でてやり、新居に慣れさせようとする飼い主K-40。
数十分してようやく慣れてきた子猫。ボールで一人遊びを始めた。ちなみに、先住民の2名はどこかに行方不明。

ヤレヤレ ┐(´-`)┌ マイッタネ

そんなこんなで1日目の夜を迎えたK-40家。子猫は遊びつかれて眠りに付き、先住民の2名は一度も表に出てこないまま。
念のためにリビングの床で寝ることを決めたK-40。寝室から毛布と枕を持ってきて床につく。
翌朝、「子猫は大丈夫かぁ〜」と飛び起きた飼い主。目の前のカウチで爆睡する子猫を発見。

(^。^;)ホッ

とりあえずエサをやることにして、子猫用に小さめの容器にエサを入れてやる。すぐさまかぶりつく子猫。
普段ならエサの袋の音がするだけで飛んでくるクリプトンとゼノン、今日は影も形も無い。まだびびって隠れているらしい。
2名の名前を呼び続けること十数分。やっと2名が顔を出した。

・・・・ところが!

自分達のエサ箱のすぐ横で別のエサ箱をつついている子猫を発見した2名。その場で凍りつく。
そこから一歩も近づこうとしないで新住民の様子をうかがっている。

・・・と、その時!

エサを食い終わった子猫が振り向いて歩き出した。それを見た先住民の2名、「うしゃ〜」と恐怖の叫びを上げて逃げ出す。
子猫がいじめられる心配は無さそうだからちょっと安心したものの、2名の極端なまでの臆病さにちょっと困っている飼い主K-40。


しばらくして、またボールで1人遊びを始めた子猫。
ボールの鈴の音に惹かれて顔を出したクリプトンとゼノン。

子猫の姿を見て凍りつく

一定の距離を置いて、1人遊びする子猫を見守り続ける2名。

しばらくして遊びつかれた子猫、カウチの上で昼寝を始めた。
それを見たゼノン、勇気を出して近寄ってみることにした。
音も立てずにジリジリと子猫のそばに寄って行くゼノン。
あからさまに緊張しているのがよく判る。
「お願い!動かないで!」という気持ちが背中に表れている。
果たして、ゼノンは30センチぐらいまでの距離に近づいた。
クンクンと匂いを嗅ぎ、新住人の正体を確かめようとする。

・・・と、その時!

ムクッ!!!(・_・)......ン?

気配を察した子猫が目を覚まし、上体を起こした。

ウシャーッ!@#$%^&*( ̄□ ̄;)!!!!!!

・・・恐怖の叫び声を上げながらダッシュかまして逃げてゆくゼノン。
ゼノンにつられて一緒に逃げてゆくクリプトン。

ヤレヤレ ┐(´-`)┌ マイッタネ

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